Shizuoka University

多孔質高分子薄膜の水支援成形と薄膜面積の拡大

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目的

本研究の目的は、自己組織化を利用した高分子の多孔質ハニカムフィルム作成において、薄膜の面積を拡大することである。

多孔質構造の成形に関する研究は、コロイド粒子やラテックス球を鋳型として用いたり、ロッド-コイルブロックコポリマーのミセルの集合やブロックコポリマーの相分離の利用など多岐に渡っている。本研究では高い湿度を持つ気体を吹き掛けることでハニカムフィルムを得る方法を用いている。整った組織を得るのは比較的簡単だが、結晶粒界のような欠陥が発生する。一度に大面積を、それも組織中の欠陥が少ない薄膜の作成が可能になれば、薄膜作成が可能な面積の上限を大幅に更新できるため、大面積化の必要に迫られた時の問題解決の糸口になる。

原理

自己組織化を利用した多孔質薄膜の作成原理を図1に示す。まず薄膜材料として水に溶けない試料と、選択した試料を溶かし、かつ水に溶けも混ざりもしない溶媒を決定する。上記の条件を満たす溶質と溶媒から作成した液滴に高湿度の気体(大気や窒素など)を吹きかけることで微細構造を作成する。

気体と液滴の界面では、溶媒の蒸発により気体中の水分が冷やされ、微小な水滴の核が無数に発生する。水滴同士は凝集粗大化することなく密に配列し、径のばらつきも小さい。気体の湿度が低い場合は水滴が発生せず、高すぎる場合は径が増大するため、湿度を最適な範囲内に収めることが非常に重要となる。

もう一つ重要なのは、水よりも先に溶媒が蒸発しなければならない点である。溶媒が蒸発した後には溶質が基盤上に堆積するが、この際水滴の配列が微細構造の鋳型となるためである。溶媒に続いて水滴が蒸発した後には、空孔が六方最密に配列した溶質の薄膜が残される。孔の大きさは気体の湿度や溶液の濃度、吹き付ける気体の流速を変化させることで制御可能である。

溶液を滴下するのはなにも基盤上だけではない。溶液は水に溶けないという性質を利用し、水面に滴下する手法もある。基盤の大きさに制限されることなく膜を作成できるため、大面積を得る足掛かりになる。

結果



作成した薄膜の画像を図2に示す。均一な径の円孔が規則正しく配列しているのが明らかとなっている。倍率が高い図では配列が乱れている個所があり、さらにはもっと広い視野で観察すると結晶粒界のような欠陥が存在する事が多い。こういった欠陥を削減しつつ面積拡大を計る。